連続ブログ小説 くりーむぱん②

 春。晴れた日の洗濯物みたいな匂いを南風が運んでくる。泥が落ちきらなかった白いスニーカー、風をいっぱいに溜めた紺色のパーカー、塗装が剥げかけた銀色の自転車。

「けんとーーー」

 横断歩道の向こうで、ブレザーの制服姿でこちらに向かって歩きながら、あすかがこちらに手を振っていた。

「どこ行くん?」                                     「ちょっと海の方まで自転車で散歩」                            「あすかは?」                                       「えっ、私も散歩なんやけど」                                「一緒に来る?」

 僕は自転車を押して、あすかと一緒に歩き始めた。自転車を漕いでいたときに力強く吹き付けていた南風は、歩き始めると幾分優しく感じた。

「なんで、制服着てたん?」                                 「部活で学校行ってて、お昼過ぎに帰って来たんだけど、家帰って制服脱いだら勉強する気なんないから」                                            「なるほど」

 あれこれしゃべっているうちに、小学校が見えてきた。あっという間に月日は流れて、僕は高校生になった。

「ここ、けんとが通ってたとこ?」                              「うん」

 僕とあすかは隣の学区の小学校で、中学校で一緒になり、高校も一緒に地域の進学校に入った。地元の中学校から同じ高校に進学したのは四人しかおらず、僕はみんなとそれぞれ仲良くしていた。

「変な話していい?」                                    「なになに。どういう系?」                                 「昔話系」

 あすかが聞きたい!と、食い気味に返事をする。僕は、頭の中で、おもむろに小学校の頃の記憶のアルバムを取り出す。グラウンドのそばの桜の木が並んだ小道を二人で歩きながら、僕は昔の話をはじめた。

 

                                          

 

 

 

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